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小説『パチンコ』感想―全力でおすすめしたい一冊!

小説『パチンコ』書影

ミン・ジン・リー著『パチンコ』読了。はーーなんと面白い小説!!

多くの人がこの小説を読んで「素晴らしい読書体験だった」と言い、それは私にとっても全く同じだった。

とにかく夢中になって読んだし、この素晴らしい本の感想を是非書いておきたい。

 

私はお気に入りの本を繰り返し読むタイプの人間なので、新刊や話題作に詳しくないけれど…

たまたま目に飛び込んできたこの本の装丁が美しかったこと、次に数々の絶賛されたレビューを読んでただ事ではないと感じ、本を手に入れた。

 

すこし話がそれます。

長風呂しながら、もしくは眠れない夜のために読む本と、食事や家事の時間を割いてでも読みたいと思う本とでは、

後者の方が物語に対する“飢え”があると感じている。物語を渇望する喜びといってもいいかもしれない。

『パチンコ』は私にとって、間違いなく後者の物語だった。

家事を放り出して、すぐにでもページの続きをめくりたかったし、寝る間も惜しんで物語を読み続けた。

(私が熱心な小説ファンでないこともあるけど)そういった小説に以前出会ったのは、いつの事だったかもう思い出せないのです。

 

小説『パチンコ』について

この物語は、韓国系アメリカ人作家のミン・ジン・リーさんによって書かれている。

リーさんが着想を得たのは1989年の頃。

当時大学3年生だった彼女は“在日”をテーマにした特別講義に出席。在日コリアンであるために卒業アルバムに書かれた、差別的なメッセージを苦に自殺した男の子の話をどうしても忘れられなかったのだという。

その後の1996年、日本のコリアンの物語を書き始めた。

膨大なリサーチを行い長編の草稿を書き上げたが、2007年に東京へ引っ越してきて、数十人の在日コリアンの人々に取材を重ねた結果、草稿は処分し2008年から同じ物語を一から書き始めたのだそう。

2017年、着想から約30年が経ち出版された『パチンコ』は、アメリカで発売され100万部を超えるベストセラーとなった。

同じ年に全米図書賞の最終候補になり、30の言語で翻訳刊行が決定している。(日本では2020年7月に第一刷刊行)

あらすじ

在日コリアンの“ソンジャ”を主人公に、4世代にわたる一家の生き様を描いた物語です。

日本に併合された朝鮮半島、釜山沖の影島。

下宿屋を営む夫婦の娘として生まれたキム・ソンジャが出会ったのは、日本との貿易を生業とするハンスという男だった。

見知らぬ都会の匂いのするハンスと恋に落ち、やがて身ごもったソンジャは、ハンスには日本に妻子のいることを知らされる。

許されぬ妊娠を恥じ、苦悩するソンジャに手を差し伸べたのは、若き牧師イサク。

彼はソンジャの子を自分の子として育てると誓い、ソンジャとともに兄が住む大阪の鶴橋に渡ることになった。

1910年の朝鮮半島で幕を開け、大阪へ、そして横浜へ―(本文より)

感想

上下巻、全700ページを読み終えて驚いたのは、面白い!とか差別が…といった感想ではなかったことだ。

(正直なところ、私がどのような立場でこの歴史的事実に感想を述べるのが適切なのか、今でもよくわからない。個人的に『パチンコ』は反日小説ではないと思っているし、ドラマのように楽しめる作品だとも思っている。)

 

確かなことには、はじめにも書いたけれど、自分が今ここに生きていることを忘れるくらい!物語に没入した。

衝撃的なシーンでは息をのんだし、登場人物たちのやり取りを取りこぼすまいと読み返し、反芻したシーンもある。

また、娘が母になり祖母になり…年老いて家族的役割や社会的立場が変化する最中で、心情や発する言葉が変わってゆく様にも、心が震えた。

おとなは保守的だーといった私の中の“小さな反抗心”が、登場人物の人生を通しそれが愛情であることを理解した。

 

結局、最後の最後に残ったのは、登場人物ひとりひとりが体の中を通過していった体感で、

ずっしりと私の胸に、その人たちの人生の重みが残った。

多くの人が『パチンコ』を読んで「素晴らしい読書体験だった」と語るのは、

物語に引き込まれる以上に、読み手が登場人物の人生を“目撃”しているからなのだと思う。

 

私は登場人物たちの中に、自分の影を見た。

フニの結婚を心から喜んだ母に、

ソンジャが初めて駅前でキムチを売った日の心境に、

死を間近にしてソンジャに辛くあたるヤンジンに、

自分のことを隠して生きたノアに、

悦子がモーゼスとの結婚を葛藤する姿に、、。

 

素晴らしい読書体験だった、と私も言うほかありません。

おススメなので、是非読んでみてください。




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